コラム/めざせ達人

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めざせ達人

第231回 欠伸

 益田にて、中学校の部活動が廃止の方向に動いている。私より八歳年上の教育委員会の方が入会された。事始めに合気道に興味のある中学生部員を募集し、小学生から高齢者まで一緒に稽古している当会がこの中学生を受け入れることになった。教育学者、森信三さんの言葉が浮かんだ。「人間は一生のうち逢うべき人に必ず会える。しかも、一瞬早すぎず。一瞬遅すぎないときに。」

 稽古中にまさかの欠伸をする子、合気道稽古の後行なう、剣術稽古での事だったので興味が無いのかと聞いたところ、“剣をしたい”との意志を確認。次の週も剣術稽古を始めたところ、それでも出てしまう、私と剣を構えて向かい合った時だった。私は自分の口を手で押えて欠伸禁止のサインを送った、ハッとした表情になり、自分の欠伸に気付いたように思えた。

 欠伸は自分の意志に関係なく起きる不随意運動だが、覚醒から睡眠、睡眠から覚醒、緊張からリラックス、脳の状態を変化させるスイッチの役割を持っているようだ。しかし、真剣勝負の場で起きるのは、座って行なうような将棋の対局で緊張感を解きほぐし、脳をリフレッシュさせる手段として故意にする欠伸だ。大事な一手を打つ前に欠伸をする升田名人が有名だ。緊張感を解きほぐす欠伸があることは知っておくと、役に立つことも有るだろう。

  但し、人前で涙を流し、口が裂けんばかりの欠伸をした場合、相手はどのように感じるか、これは知っておかなければならない。私は、恥ずかしい行為だと思っているので、どうしても欠伸を我慢出来ない場合は、ハンカチか服の袖で口を覆って気付かれないように欠伸しなさいと、以前言った事がある。そうは言っても相対稽古の最中に目の前で、これ見よがしに欠伸することは、どんなに疲れていても許されることではない。気の緩みが、大きな事故に繋がることにも成りかねない。合気道の稽古は真剣勝負として捉えなければならない。

2024年5月11日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai

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