毎月発行していました新聞「めざせ達人」から掲載していましたが、2025(令和7)年4月より不定期の投稿としております
コラム/めざせ達人
めざせ達人
終戦記念日にて=天を回らす=
山口清吾先生が一九九六年に亡くなられてもう三十年になる。私は、先生の年は既に越えているものの、どの位先生に近づくことができたのだろうか、と自問自答するも答えは出ない。先生の姿は遥か彼方に在り、どれ程も近くなってはいないのだから。
鋭く厳しい投げ技、細身先生だがぶつかればはじき返す体幹力、力のぶつかり合いあいが無く投げられて気持ちの良い技、また、片手取りの技で握っても力を感じさせない先生の手の柔らかさ。間の取り方、視線、投げた後の姿勢、凛とした立ち姿、囚われることなく自在に臨機応変に相手を操る。などなど、言葉にするのが難しいうえに、どれもこれも自分には実現出来ていない。私は今まで何をやってたのかと思う。
八月十五日の終戦記念日思う。戦時下、山口先生は学徒動員により人間魚雷回天の搭乗員として訓練をされたことを亡くなられて知った。私が福山の話をした際、戦争中に鞆の浦に行ったことがあると言われたが、どこの基地に居られたのかは不明。回天の基地は山口県に三か所、大分県に一か所有った。”天を回らし戦局を逆転させる”という意味で回天と命名されたが、回天で出撃して成功したのはわずか三基、成功率二パーセントと奇跡に近かったようだ。
死を覚悟され、出撃を待って居られたと思うと、先生のあの言葉が胸に刺さる。前後の話は記憶にないが、あの言葉と先生の声・表情を忘れることはない。
『死ぬことなんて大したことじゃないんだよ』
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