毎月発行する新聞「めざせ達人」から掲載しています
コラム/めざせ達人
めざせ達人
第230回 気付く
今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」のヒロインは紫式部で、平安時代中期に世界最古となる小説『源氏物語』を書いたとされている。このことから、日本は国語の国だと称する人も居る。また、哲学者シオランは「祖国とは国語なり」という言葉を残している。国語教育の大切さを知らなければならない。
七十二年の歳を重ねて強く思うことは、自分の言葉の貧弱さ、日本語には様々な表現が有るのに出てこない、語彙も不足している。また、相手が伝えようとしている事の深意を読み取る事が出来ず、そのままの言葉で受け取ってしまう。つまり、鈍感、機転が利かないということだ。
学生時代の本部道場稽古前に、山口先生が電車の中での出来事を私に話された。「隣に座った二人の若者が、余りにも行儀が悪いので、無礼者!と一喝したんだよ、その二人に似てるのが居る」と。しかし、私は行間を読むことが出来ず、聞き流してしまった。先生は私に、真偽を確認して欲しかったんだと、何度も、何時まで経っても、思い出す。それが出来ていたら、私の人生も変わっていただろう。
立場が変わって指導者側になると、人が見えるようになる。何も言わなくても気が付いて動く人、私のように言われても動かない人が、特に良く見える。その差は合気道の上達に比例しているように思える。“気付く人”になるためには、自分磨きをすることが唯一の方法だと思う。失敗しないために良書を読み、様々な経験を積み、人や物の観察を怠らず、小さな事も見逃さない訓練も必要だと考える。
人が稽古している技を見た時、何処に視点を置いて見ているだろうか、ぼんやり眺めていないだろうか。特に、三人稽古のように外れた時は、見取り稽古の時間であり、休むこと無く、待ち時間を楽しんで欲しい。自分を知らなければ、人との違いを気付くことが出来ない。自分の技を知る事は容易では無いが、技を細部に至るまでイメージ出来るように成れば違いを認識出来ると考える。
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