第200回 正面打ち一教

 新陰流を稽古されていて、現在は立教大学名誉教授の前田秀樹氏が、広島まで指導に来られたことがあった。私が合気道を休止していた九年間の最後の数年は、新陰流を稽古した。前田氏の指導は極僅かではあったが、双方歩み寄り斬り込んでくる太刀を小太刀で受けて相手の籠手を押さえる、というものだった。この時の目の置き所、気持ちの持ち方は、「手元を見ずに、相手を貫いて遠くに気持ちを持って行く」ということを教わった。

 この気持ちの持ち様は、まさに合気道の”正面打ち一教”だった。学生時代に教わった、「目の前の障害物に捕らわれること無く、相手を貫いて進め」という”正面打ち一教”と同じであった。この心持ちで”正面打ち一教”を行えば、必ず上手く出来るとは限らないが、私は、相手を意識しすぎている時には、腕を掴んで力んでいることが多い。

 信抜流の居合いで、一本目の型は極意の型だと宗家から聞いたことがある。同じように、合気道でも最初に教わる技の“正面打ち一教”は、極意の技の一つと私は思っている。これまでに何度も、壁が現れ乗り越えたとかと思えば、別の壁が現れ私の”正面打ち一教”完成を邪魔する。今でも次の壁を待ち受けている状態と言える。

 会員の方から、「正面打ち一教が分からなくなった」という声があったこと。また、コロナ禍において”正面打ち一教~四教”の稽古が出来なかったため、技の習得が困難だったことから、対策として、まず“正面打ち一教”から紙に記録することとした。現在、私が指導している”正面打ち一教”を整理する過程で、私の師匠山口清吾先生、道主やその他師範の動画を確認した。道主とは“足運び”が違っていることがわかっていたが、その他の点でも少々違っている。開祖、植芝盛平先生から始まった合気道だが、三代目道主と異なることに問題はないと思っている。

 長い年月を経て、現在の私の“正面打ち一教”になったのだが、山口清吾先生の“正面打ち一教”になっているかどうかを確認している。足の動きについては、まだ確信は持てないが問題ないと思う。緊急事態宣言解除までに結論を出したい。

2021年9月7日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai