三月は異動の時期、就職、転勤、進学と生活環境が大きく変化する。これに伴い当会の会員にも退会があったが、今年も新入会員の新たな出逢いを大いに期待している。哲学者、森信三さんの言葉、『人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に。』が希望を与えてくれる。
故山口清吾先生が大先生(植芝盛平開祖)に逢われた時のことを、このように話されていた。『一番逢いたくない人に逢ってしまった。』大先生との出逢いが、山口先生にとって人生の転機となる大きな出来事だったことが分かる言葉だ。しかし、本当に“逢いたくない人”と捉えるのは意に反する。大正十三年生まれ、学徒動員、昭和二十年復員の時は二十一才、昭和二十五年二十六才(合気道山口WEBより)で弟子入りされている。逢うべき人に逢われたのは、早すぎず遅すぎない、二十六才の時ということになるのだろう。
私の学生時代は、昼休みの一時間、レスリング道場を借りて稽古を行なっていた。山口先生は週一回指導に来られた。入部して数日後、道場の掃除をしているところへ、私服で入ってこられた初めて見る人、“何処のおじさんだろう?”と思ったのを覚えている。卒業後も合気道を続けることが出来たのは、山口先生を始め、諸先輩のおかげだ。山口先生しか知らない学生は、卒業して初めて山口先生の偉大さを知る。卒業時、鹿島神流木刀を二本くださった伊藤先輩には、尊敬の念に堪えない。今でも剣の稽古を続けることができたのは、この木刀があったからだ。
『逢うべき人には必ず逢える。一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に。』この言葉は私自身実感できる。その通りだと思える。合気道で出逢った人だけではなく、ひとつのことを一所懸命、取り組んでいる時、そのことに関係する人に出逢うことが出来たことを思い出す。ただただ、何の努力もしないで居ても、逢うべき人は現れない、一所懸命でなければならないと思っている。