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コラム/めざせ達人
めざせ達人
第216回 気海丹田
私の二十代後半、人生を振り返り、失敗しないために、正しい判断ができるように、何をすれば良いか考え試行錯誤した結果、ひとつの結論にたどり着いた。それは、“正しい呼吸をすること”ということだった。所謂、腹式呼吸なのだが、どうしてこれが分からなかったのかと目から鱗が落ちた思いだった。
この時知ったのが、白隠禅師の内観法、寝て行なう健康法で仰臥禅だが、これは何度か試みただけだ。四十年を経て、この内観法にまた出会った。寝る前と起きる前に布団の中で出来るので、簡単で続けやすい。失って初めて気付く健康の有り難さ、尊さ。失った健康を取り戻すためには努力を惜しまない。
人を動かしているものは、健康な身体ではなく、気力だと七十才になって気付いた。昨年亡くなられた猪木さんの「元気があれば何でもできる」という言葉は名言だ。膝に痛みを感じながら、解体作業をやり遂げることが出来たのも、気力以外に何も無い。しかし、元気があっても身体が動かなければ合気道はできない。また、歩行と会話が出来なければ、稽古指導も出来ない。合気道を続けるために、健康な身体は必要条件、その為の努力は惜しまず、継続しなければならない。
白隠禅師の内観法は、気海丹田に全身の気を集める方法で、へその下、下腹こそ本来の自分であり、自分の中心は下腹だと観念する。その方法は、「吾が此の臍輪(さいりん)以下丹田氣海及び腰脚足心(ようきゃくそくしん)、總(そう)に是れ吾が唯心の浄土。浄土何の荘厳(しょうごん)か在る」。その意味は、「わがこの臍下丹田から足心〈土踏まず〉まで、これぞわが内なる浄土である。この浄土はどのように荘厳されているのだろう」。身体を整え、この言葉とともに観想を行い気海丹田に気を集める。その結果、気が臍下丹田に満ち病も治るのだという。
合気道の稽古中、山口清吾先生は“肚から”という言葉をよく使われていた。技を行なうに当たっては、手ではなく、肚つまり気海丹田から動くことと理解する。
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