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コラム/めざせ達人
めざせ達人
第229回 ハラから
私にも稽古で怪我をした経験があり、事故発生後は暫くの間、稽古出来ない状況が続いた。厳しい投げをする師範の受けではあったが、投げる瞬間の師範の思いと、受けを取る瞬間の私の思いが、一致しなかった事が原因で事故が発生した。一致しなかった理由は、取りの思いを無視して、受けの形を自分勝手に決めたことにあった。正面打一教のような技でも怪我は起こり得るのだから、よくよく注意しなければならない。怪我をしないために、受身を取る時の心構えとしては、“考えない、流れに逆らわない”こと。
同じ投げ技でも、人が違えば投げ方も変わるので、投げ方に合ったように受身も変化しなくてはならない。鋭い投げには全身柔軟に対応して素早く、ゆっくりした投げにはゆっくりした動きで受身を取る。このように相手に合わせた、千変万化な受身が出来るようになる必要がある。受身の基本は、“足は居着かず軽快に、上半身は柔軟に、肚で受身を取る”ことであり、これを体得して欲しい。
身体の前面部分を“腹”、身体の中心部分を“肚(ハラ)”と言い、臍下丹田を表わす場合もある。恩師山口清吾先生の稽古では“ハラから”という説明を聞くことが多かった。山口先生が遺された資料のなかから、肚に関する言葉を拾ってみると、「肚にまとめる、肚で動く、肚で視る、肚で立つ、肚を練る、肚と手を結ぶ(気持ちと三角)、静かに肚を中心にして歩く、肚を中心として手足が一体となって動く、肚と身体が手・足の動きに表れる、眼・手・足・身体も肚からまとめて相手と対する、相手の中心・肚を制する、見の眼より観の眼 心・肚で視る」等がある。
肚にまとめる、ということは上半身及び下半身を楽な状態にし、肚・丹田の一点に力を集中することだと私は考える。肚を意識した稽古ができるようになっているだろうか、肚と手の平が繋がっているだろうか、身体の向きを変えるとき手・顔ではなく肚から動いているだろうか、自分自身を点検して欲しい。
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