第65回 真似る

少年部の稽古中でのこと、「先生これであっているかどうか見てください」、「先生これで良い?」などと質問してくれる熱心な子がいる。時には「(先生の手本と)どこか違うような気がする」と首をかしげながら自分の技に納得いかない様子もある。手本を見ただけでは理解できなくて、「どうするのかわからん」という子はいるが、このような質問をしてくれる子はこれまでいなかったように思う。

上達のための第一歩は、手本を真似することから始まる。まず手本を見て、次に自分自身でやってみて、最後に手本どおりにできたか反省する。最初の技を覚える段階ではこの3つのステップの繰り返しとなる。子どもにとっても大人にとっても、手本を忠実に真似ることが大切なことだ。

しかし、大切なことは簡単なことではない。同じものを見ても人それぞれ見るところが違う。見落とし、見誤りがないようにしなければならない。これも一つの稽古となる。手本どおりにできるようにすることは修正の連続である。できたと思って満足したら進歩はない。相手が変わればできなくなることを知らなければならない。そして、やってみても思わなければ進歩はない。これでいいのかと、絶えず自問自答しなければならない。

合気道の稽古は、取り(投げ)と受け(受身)の繰り返しだが、受けを取ってくれる相手の協力がないと内容の無い、つまらない稽古になってしまう。お互いが、一回一回の稽古を大切に、いつまでも新たな気持ちで取り組みたい。少年部の指導の中から“稽古のありかた”を学ぶことができたこと、有難く思っている。小学生で自分自身を省みることができる、稽古への集中力はすばらしいこと。自信が持てるようになってからも、このことを忘れないで欲しい。

私自身、講習会での稽古は、自分の考えを加えることなく、忠実に手本を再現し、指導者の考えを理解することが必要なことだと反省している。

 

 

2010年5月8日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai