第234回 雑巾がけ

 猛暑が続く七月最後の稽古では、室内温度計は三十七度を超えていた。この暑さにもめげず道場に来てくれることに感謝している。間違いなく、強い心と強い身体を培ってくれる。『雨ニモマケズ、風ニモマケズ、雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ』で始まる宮沢賢治の詩が頭に浮かんでくる。この詩は、宮沢賢治の死後、トランクのポケットから発見されたメモ用紙に綴られていた事でより一層引きつける。

 稽古は、入場時の座礼から既に始まっており、雑巾がけと続く。人数に関係なく一往復するが、畳が柔らかい為、滑るような雑巾がけをすることは難しい。また畳の段差で転んでしまうこともある。初めて稽古する子が、見事な走りをして驚かされたことがあったが、入門部の保護者の方で雑巾がけができなくて、どうしたら良いのかと聞きに来られたこともあった。

 雑巾がけを稽古とし、技と位置付けているが、自分自身で身体の使い方を習得することを目的としているので、教えることはしない。スタートする時の瞬発力と雑巾を押す力のバランスを保つ注意力、そして最後までやりきる集中力が必要になる。その為には、上腕の筋肉と背筋・腹筋の体幹力そして足の筋肉の強さなどが備わっていなければならない。雑巾がけを筋トレとして、技として真剣に取り組んで欲しい。また、雑巾がけが出来なければ合気道の技を覚えることは、それ以上に難しいことと想像される。真剣に取り組んで欲しい。

 入門部、少年部の雑巾がけを観ていると、遅れてゴールする子の中には、途中から雑巾を投げる子、片手の雑巾がけでゴールする子が居る。想像どおりの子もおれば、意外な一面を見せる子も居る。何事にも、真剣に取り組むことができること、そして他人が見ている場合、見ていない場合で行動に差異が無いように心掛けること。稽古では相手が誰であろうと、同様に真剣に取組むことが肝要。

2024年8月3日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai