人は生きていく限り、もれなく高齢者と呼ばれるようになる。しかし、体力は落ちても合気道では現役引退の必要はない。体力に合わせた稽古をすることができるからだ。室内温度が三十九度にもなる猛暑の中での稽古でも行なっていることだが、最後まで受身を取る回数を減らすことで、体力の消耗を防ぐことができる。少年部や初心者では正しく受身を取る稽古にもなっている。
合気道と出会う年齢はさまざまで、子ども時代に合気道を始めた場合、進学と就職が壁なり、継続は難しい。私の息子も五才から始めて就職するまで名前を連ねていたが、離脱した。子どもの頃は、休むと叱られるから稽古していたというのが本心だったようだ。大先生(開祖植芝盛平翁)は『合気道とは、人の完成の道』と云われているように、稽古を通して成長することを願っていたのだが、合気道に正面から向き合うことは無かった。当会に在籍した子ども達が、合気道を今どのように思っているのだろうか、機会が有れば聞いてみたい。
現在一般部に在籍されている大人の方は、自分の子どもと一緒に少年部から稽古された方が殆どで、合気道を極めることを目標にされていると思う。合気道の楽しさを体験されていると思っている。『合気道とは、宇宙の万世一系の理であります』と大先生が云われているように、“宇宙と一体化する”ことを目標に、皆さんは稽古されているのではないだろうか。
還暦を過ぎて合気道を始められた方も、“めざすところ”は、宇宙との一体化であると認識して欲しい。“いきつく”ことは出来ないにしても、老いた身体を労りながら、身体が動く限り稽古を続けて欲しい。また、私もその覚悟でいる。
私が五十代の頃、本部道場の朝稽古で初対面の相手と、歓喜に満ち溢れる稽古を体験したことがあった。白帯の方だったが、とても謙虚で、受身を取っても投げても初めて体験する心地良さを感じた。お互いに、この感覚を共有できた一時間だったと確信した。“一体化”とはこの事ではないかと思った。