四段
この度の昇段にあたり、改めて過去の昇段の時の作文を見返してみると、その時に考えていた事や感じていたことを思い出し、自分の中での変化を感じられてなかなか面白い。
今も同じように感じている事もあれば、少し違うかなといったところもある。
当然のことではあるが昇段するにつれて少しずつ視点が変化してきた結果だろうと思う。
四段となった現時点で感じていること。
その一つに技の『形』に対する意識が少なくなってきていることがある。
以前はそれぞれの技に対して、足の送りや手・腕の動かし方など基本的な『形』をかなり細かいところまで一生懸命覚えて、『形』どおりに動くことを考えていたが、今はその『形』へのこだわりが少なくなってきているのを感じている。
体が技を覚えて意識しなくても形に出来るようになったこともあるが、少しずつ相手に合わせる合気道が出来てきたこともあるのかと考えている。
合気道の稽古は型稽古がほとんどで、取りと受けを交互に行う形で行われる。
同じ相手と同じ技を繰り返していても、一本一本間合いやタイミングなど微妙な違いが必ず出てくるし、相手が変わればさらに変わるのも当たり前のこと。
その中でどんな状況でも技を掛けられるようにするにはどうすればいいか。
相手の体をコントロールすることは不可能だが、自分の体は自由にコントロールできるはず。間合い、タイミング、相手に自分を合わせていければいつも同じように技を掛けられるのでは?と考えながら稽古をしている。
そのためにはまず相手と自分の状態をしっかりと認識する必要がある。
打ち込んでくる相手との間合い、スピード、当たりの強さ、方向、重心の位置などを感じ取りながら、相手に自分を合わせるように動く。
技自体は基本的な形として体で覚えているが、相手に合わせようとすれば、少しずつ形から外れるところも出てくる。
その少しのずれで相手を崩せなかったり、技がかかりにくかったり、受けによっても全く違ったものになってくる。
その時に何がずれて相手を動かせなかったのか、そこから崩すためにはどうすればいいのか、いろいろと試行錯誤しながら稽古をするのはとても面白い。
わざとタイミングをずらしたり、間合いを変えてみたり、相手に受けた時の感じ方を確認してみたり、私なりに解釈しているその技のポイントを意識しながら、ずれによる違和感が少なくなる方法をいろいろと試してみる。
それを繰り返していると何となく気持ちよく技がかかる瞬間があり、おそらくそれがその時の理想の形で技をかけられた瞬間だったのだろうと思う。
以前はどんな状況でも同じ形でしか技を掛けることができなかったが、今は形よりも技の基本となるポイントだけを意識しているせいか、形にとらわれずに楽に動けるようになった気がしている。上手く捌くことができた時は、身体で覚えた基本の『形』との違和感も少なく、自分にも相手にもあまり無理がかかっていない感じを受ける。
今はいつでも誰とでもそのような感覚を得られるようになることを目標にしている。
今年で50歳になり筋力や体力が低下してきているのは間違いないが、合気道については自分でもまだまだ成長できると感じている。それは合気道が力ではなく、考え方や感覚が成長することで熟成されていくものだと感じているからである。
これからも稽古を通して多くのものを感じ、考えながら稽古に励みたいと思っている。
最後になりますが、改めて大畑先生、光輝会の皆様、楽しく稽古ができる環境に感謝しつつ、
これからも健康第一に精進したいと思いますので今後とも宜しくお願い致します。