第185回 危機管理

外出自粛要請のためステイホームが延々と続いている。運動量が激減し、筋力の低下が気になるが、コロナ太りとは逆に、私の体重は食欲があるにもかかわらず減少の傾向にある。増々、ムンクの“叫び”に見えて来る。

 中国新聞(五月三日)「オピニオン」に思想家で、合気道人でもある内田樹氏の特別評論「新型コロナと文明」が興味深い。新型コロナに対する日本政府の対応はもどかしく、不信感を抱くことばかりなのだが、これは日本人の国民性によるもので、日本人は危機管理ができないことを認識する必要があるようだ。

その新聞の内容は、『・・・「最悪の事態にどう対応するか?」という問いを前にすると、日本人は思考能力が一気に低下する。これは国民性と言ってよい。「プランAが失敗したら」という仮定そのものを一種の「呪い」のようにみなして、忌避するのである。・・・日本社会における危機管理を論じる場合には、「日本人には危機管理ができない心性が標準装備されている」という事実を勘定に入れる必要がある。・・・今回の新型コロナウィルスによるパンデミックでも、日本人は「感染は日本では広がらないだろう」という疫学的に無根拠なことを信じ、広言していたが、それを「嘘をついた」というべきではない。あれは「言霊(ことだま)」だったのである。「感染は広がらないだろう」と言えば、その通りのことが起きると信じて、善意で言い続けていたのである。・・・』最後に、早く気付かなければ過ちを繰り返すと言われている。言葉に宿る霊力が、言語表現の内容を現実に実現することがあるという文化には、私自身もある程度染まっていたように思うが、このことが危機管理能力に影響するとは意外だった。

新型コロナ禍の終息に向かって、世の中の流れが変わりつつあるように思われるが、不透明なことが多く、不安をぬぐい去ることができないでいる。絶対に感染しないという信念で危機管理を行っても、「不吉なことは口にしたくない、早く、安心して、楽しく稽古できるようになりたい」と言いたい。

2020年5月7日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai