第228回 失敗を繰り返さない

 バイクも毎日使用していると、チェーンの伸びとギヤの摩耗でチェーンが外れやすくなってしまう。息子に早くギヤとチェーンの交換をするように伝えて二ヶ月になるのだが、“時間がないから無理”と云う。バイクは動いているので優先順位は低いが、二度目となれば早めに時間を作る必要がある。足りないのは、同じ失敗を繰り返さないという強い覚悟と工夫ではないだろうか。

 習い事をするに於いて必要なことは向上心だ。年齢を問わず、これを持たなければ上達は難しい。稽古に於いても、向上心旺盛な人は指摘されたことを良く記憶しており、欠点をひとつひとつ克服して行くことができるので、当然上達は早くなる。逆に、同じ事を繰り返し指摘される人は、その壁を乗り越えなければ先に進むことはできないであろう。但し、投げ技に於いて“力を抜く”ことは一朝一夕には困難で、常にこれを心掛けて稽古を続けなければ実現することは出来ない。

 合気道の習い始めは、半身の構え、前方回転受身、後方受身、膝行、転換等の基本を覚える。これを完璧に、左右同じように出来なければならない。しかし、人間の身体は左右同じようには出来ていない。百メートル世界最速のウサイン・ボルトでも左右の歩幅が異なり、右足が十七センチ大きいのだが、人は誰も左右均等では無く強弱があるようだ。合気道の受身でも、相手の左右の違いを感じることが出来る。自分の技の左右差を自覚することは難しいが、力を抜いて感覚を鋭くすることができるようになれば、受身で相手の左右差を感ずることが出来る。

 自分を振り返り、同じ過ちを繰り返さないという決意が自分を成長させる力となる。『一大事とは今日(こんにち)只今(ただいま)の心なり』とは、禅の言葉で「大事なことは過去のことでも、未来のことでもない。今日、ただ今をしっかり見つめて生きること。」ということ。稽古は一日二十四時間の内の一時間、週二回の稽古は年間にすればおよそ九十時間、自分自身を見つめる時間であって欲しい。

2024年2月2日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai