第72回 ドレミファの稽古

何年ぶりの新宿駅だろうか、歌舞伎町コマ劇場跡を抜けると宿泊ホテルの近くはハングル文字ばかりで韓国に来たのかと思わせる程だ。風邪を引いて厚着してきたが東京は暖かかった。夜の稽古までホテルで休養した。

大泉学園駅から徒歩10分のところにあるドレミファクラブ二階の貸しホールにマットを敷いて道場となった。安野先生の稽古が始まり、中央にある2本の柱がよけいに緊張感を高めてくれた。いつものように激しい稽古が続き.徐々に呼吸が乱れてくる。何度も出陣するが、雑巾のように投げられ、ついに力も尽き果て立ち上がることができなくなる。「モウイッチョウ」の声でようやく起き上がる。しかし、それが最後ではないと気付くと空回りする心臓の鼓動が大きくなる。こんなに体力がなかったのかと反省したが、今思えば還暦まであと1年という歳なのだから当然ではないか。

生きて帰れることの喜びを感じながら、新幹線の座席で稽古を振り返っていた。大泉学園には故山口先生のお住まいがあった。山口先生の色々な記憶が頭をめぐっていたが、広島講習会でのこんな会話の場面を思い出した。

「先生の技は難しくてよくわからないです」
「いつもみていればわかるようになりますよ」

いつも見ていた側から言えば、稽古仲間から“わからない”とか“難しい”という言葉を聞いたことはない。私自身、あんなふうに投げられるようになりたいという思いしかなかった。今でもそれは変わらない。

難しいと感じる理由は自分自身で受身を取っていないからだと思っている。見て分からなくても、受けを取ればそれ以上の事を感じることができる。ただ、どうやって投げられたのか分からないことはあるのだが・・・。

20年も前の忘れていた記憶だったが、ドレミファの稽古で思い出すことができた。『技は受身で覚える』というのが私の基本だ。

 

 

2010年12月5日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai