第221回 お辞儀

 稽古前の師範に対する礼、お辞儀の仕方について、ある師範が話されたことがある。最初の大先生(開祖植芝盛平翁の写真)に対するお辞儀の後、師範と対面しお辞儀するのは、稽古人が先にするものだと注意された。“お願いします”と稽古人がお辞儀し、師範がそれに答えるのが道理ではある。師範がお辞儀するのを待って、稽古人がお辞儀するのは、礼にかなった所作ではないが、稽古人の誰かが音頭を取ってお辞儀する事が無ければ、そのようになってしまう。

この話は、当会でもそのようにしたいと言う意味ではない。私は、稽古人の皆さんからも教えて頂くという気持ちから、自ら先に“お願いします”と言っている。只ここで、私が先にお辞儀したにも関わらず、頭を起こし始めた時には、子ども達はとっくに身体を起こし、真っ直ぐこちらを見ている。私は小笠原流礼法を真似て、お辞儀を行なっており、礼三息(れいみいき)を子ども達に指導している。「お辞儀をするとき、吸う息で上体を傾け、吐く息の間そのまま留め、さらに吸う息で上体を起こす。深い礼でも浅い礼でも呼吸は同じ。」何時でも、何処でも、綺麗なお辞儀が出来るようになって欲しい。

 随分前のことだが、高校生の女子会員が会費封筒を私に手渡す際、座っている私の前に座り、封筒を両手で持って私に正しい向きにし、“お願いします”と差し出した。座ったことを尋ねると、“目上の人に上から差し出すのは良くないから”と言った。完璧な所作、礼は人の価値を高めるものだと感動した。また、礼は人への敬意を形にしたものだが、誠意が伴わなければならない。

 道場内で生じる礼儀作法については、子ども達に時折注意している。稽古中故意に受身を取らない子を見かけた場合、礼を欠くものとして厳重に注意する。最後に、お辞儀は、頭を下げるのではなく腰から屈体し、頭を落とさない、お尻を上げない、肘を張らないのが美しいお辞儀。また、礼三息で相手と呼吸を合わせることが大切。

2023年7月1日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai