三年生の時、本部道場で稽古の後、『相撲をやろう』と言う先生の声。先生は両手を畳につけて体勢を低くして構えておられます。まずは、一年上の先輩がお相手しましたが、先生の身体に触れる前に畳に手をついてしまいます。何度挑戦しても同じです。私も先生のお相手をしましたが、先輩と同じ事でした。先生の『はっけよいのこった』の声、先生めがけて勢い良く立ち上がる、でもいつの間にか私の肩に触れた先生の片手が力を奪い、畳に両手をつかせてしまいます。なんとなく負けたようで、はっきり負けたという自覚がありません。”本当は遠慮して、わざと負けたのではないのか”と自問自答したのは私だけではなかったようでした。
 稽古中は先生に投げて頂くのがとても楽しみでした。また、投げて頂く回数が少ないとがっかりもしたものです。先生の手を握ったはずが・・・・・気がつくと畳の上・・・・・そんなことが何度もありました。しかし、稽古中、受けを取らせて頂く時はとても緊張しました。先生の言葉を聞き取る事に懸命でしたし、下手な受けを取ってしまうと即座に先生は背を向けてしまわれるからです。