参段  H・W

この度の昇段にあたり、子供たちと一緒に合気道を始めてから現在までを振り返ってみると、少しずつ合気道に対する考え方が変わってきているのが感じられる。まず最初は技の形を覚えるのに必死だった頃。今思えばその頃は形ばかりで、相手は関係なく自分一人でやっている合気道だったように思う。それから少しずつ体が技を覚えてくるとようやく相手を意識する余裕ができてきて、やっと相手と合わせる本来の合気道の面白さを感じられるようになった。その頃からさらに合気道の面白さも大きくなってきた気がする。

そして最近はまた少し違った感覚や考え方も出てきている。それは武道としての合気道に対する意識であり、私の中でそれは『姿勢』や『間合い』についての意識でもある。とくに『姿勢』については「取り」の時にその意識は強くなる。

武道として大切なことは、自分が相手よりも常に有利な体勢であり続けることである。自分の姿勢を崩さずに、いかに相手の体勢=バランスを崩すことが出来るか。合気道の技はすべてこの崩しをきっかけに始まる。相手と触れる瞬間の入身転換などの体捌きや当て身などにより相手の体勢を崩し、そこから始まる相手のバランスの崩れ~立て直しの流れを、投げや抑えなどの最終的な形まで止めずに導き続ける。その時に自分は常に十分な体勢を保ったまま相手を導き続けることが大切である。そのために重要なのが姿勢であり、普段の稽古から自分の体の軸が振れないように意識することの大切さを感じている。そして姿勢とともに、崩しの大きな要素になるのが『間合い』であると考えている。

「取り」でも「受け」でも間合いは非常に大切であり、相手との距離が近くても遠くても技は不十分なものになる。相手に効果的に力を伝えられる間合いがあり、それが相手を十分崩せる間合いでもある。この間合いについては、稽古がただの型稽古にならないよう常に相手との間合いを考えながら、どんな体勢からでも相手に対応できるように普段の稽古から意識して取り組みたいと思っている。
このように最近になってやっと自分の姿勢に意識を向けられるようになってきたが、正しい姿勢や正しい間合い、正しいタイミングで技を掛けることが出来れば、よく言われている合気道の「相手の力を利用して投げる」とか「力が弱くても相手を抑えられる」といった感覚を感じられるのではないかと思う。出来るだけ無駄な動きを省き、タイミング良く最小限の力で崩した相手のバランスをさらに崩し続けるように導く。そして自分は小さく動き、相手は大きく動かす。このような動きを意識しながら、今よりももっと小さい力でも技が掛けられるようになることが今の目標である。

そして少しずつ考え方が変わってきた「取り」とは対称的に、全く変わらないのが「受け」である。自分をニュートラルにして相手の動きや意思を逃がさず受け取る。集中力が欠けた時や、ほかに気を取られた時などは受けを外してしまうこともあるので、常に集中力を保って受けの精度を上げていくこともこれからの稽古の目標でもある。

このように改めて今感じている自分の合気道について考えてみたが、結局はすべて大畑先生に指導して頂いたものばかりだと気付く。今までは頭でしか理解できていなかったことが、最近ようやく少しずつではあるが普段の稽古から出来るようになってきたのではないかと思っている。今はまだこの程度しか頭も体も理解できていないが、常にそれらを意識しながらさらに稽古を重ね、無意識でも正しい姿勢や間合いが取れるようになった時には、またさらに違った世界が見えてくるのではないかと楽しみにしている。

 

2015年8月5日