第172回 指導

 高校三年生三名のうち、二名が遅れて昇段を果たした。そして、一名は広島を離れるが、二名は稽古を続けてくれるようだ。とても有難いことだが、昇段の作文を見て感じたことは、私はこの子たちにどのように関わってきただろうか、という自責の念だった。指導方法について、もっと深く考えなければならないと反省した。

 同じ道場で、同じ時間を過ごしたとしても、人それぞれ、当然合気道の捉え方、考え方は異なる。稽古を通して、私達はお互いにコミュニケーションを取りあっている。相手の合気道に対する考え方はこの相対稽古でわかる。言葉ではなく、身体で相手とのコミュニケーションを図るのが合気道。コミュニケーション力は感じ取る力であり、この能力が技の上達を左右する。

私が目指している合気道は今でも山口清吾先生だが、今私の指導を受けている皆さんは私を目指しているはずだ。私自身が、もっと強くなり、もっと上手くなることが、指導力のアップにつながると考えている。

大学教授という経歴を持ち、現在は北海道日本ハムファイターズ監督を務める栗山日秀樹さんは、自分で野球場をつくってしまうほど野球に情熱を持っている。その情熱が監督に就任させ、二刀流大谷祥平選手を生み、2016年カープを破って日本シリーズを制覇した。情熱を失わず、諦めず、粘り強く取り組めば夢は必ず叶うと信じている。

 相対稽古中での相手への指導に当たって、注意しなければならないことは説明による指導をし過ぎないことだ。説明している間は、動きを止めなければならないので稽古することができない。一回でも多く稽古する気持ちが大切。また、相手の説明を聞く場合は、百パーセント信じないことだ、自分で考え、納得がいくまでは。説明を身体・技で行えば説得力は増す、足りないところは言葉で説明する、これを第一としたい。説明は簡潔が望ましい。

2019年3月30日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai