第168回 残心

先月、益田市民体育館後援による十回の合気道入門講座を終了した。最後まで受講されたのは、親子、小学生姉妹、園児、若い英語教師で、続けて合気道を稽古したいという人たちだった。合気道がどんなものかを知ってもらうことを主眼において講座を進め、興味を無くさないようにすることに苦心した。全員を引き止めることができなかったが、半数の人が合気道に興味を持ってくれたことは大きな前進だ。

この講座も、お辞儀の仕方「三息の礼」から始めたが、講座終了時の礼を終えた瞬間に気持ちは礼の相手から離れてしまう。十回だけの講座なので厳しくは指導しなかった。頭を下げ、礼を行ったあとも相手から気持ちを途切れることにないよう少しの時間、間を取ることが礼の残心となる。正座を続けることが残身、気持ちを相手から離さないことが残心。

居合では、斬って刀を鞘に納めたあとに間を取って残心する。弓道では、矢を放ったあとも姿勢を維持し、的に当たった矢を見つめ、矢に心を置き残心する。剣道では、打突のあとも相手の反撃に対応できる身構えと気構えを取って残心する。面が決まって、一本の旗があがったあとにVサインをして取り消された例もあり、残心は打突有効の条件となっている。

私たちの合気道の形稽古のなかでは、投げたあとの相手から目を離さず、相手の攻撃に備えることで残心する。子ども達のなかには、投げる時に相手を見ていないことがあったり、投げたあとも相手から目を離したり、背中を向けたりすることがある。今年の少年部演武では、最後まで相手から目を離さないことと、剣を使って残心することを指示したが、一度だけ完璧に表現出来た子がいた。取りが剣で残心中に、受けが緊張のせいか、目先の剣を無視して起きてしまうという場面があったのは残念だ。

茶道においても残心があるようだ。茶道具を置いたその手は恋しい人との別れを惜しむが如く心をそこに残す。残心は、場の緊張感を高め、一味違ったものになる。

 

 

 

2018年12月2日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai