第153回 礼儀は最低条件

年を重ねるごとに、得るものもあれば、逆に失うものもある。先月は柔軟性の損失について述べたばかりだが、他会の二日間に渡る一日四時間の稽古会に参加し、体力のなさを痛感することとなった。二十代前半の若者にペースを合わせて稽古すれば当然の結果と言える。

取りと受けを繰り返す通常の稽古方法については、大いに反省しなければならない。高齢者が若者と同じように受け身を取り続けることは体力的に不可能に近い。年と共に失っていく体力を、別の形で補って行く工夫が必要だと感じる。逆に、高齢化による損失を、稽古と共に備わってくるものが補ってくれるものもある。例えば、呼吸力、観察力、洞察力、対応力、間取りなどがそうだが、当然、努力せずに自然に身に付いてくるものではない。

今月予定している昇級昇段審査に当たり、会員の方から自主稽古の申し出があり、七名の会員が参加した。今までにないことだったが、この良い雰囲気を今後も継続して欲しいと思っている。初段への挑戦は二名だが、基本動作を一から見直して自分自身をもう一度確認して欲しい。

合気道の大きな目的は“宇宙との調和”であり、技を習得して相手を倒すことではない。技を習得する過程において、自分自身を磨き、人間完成を目指さなければならない。合気道の稽古は礼に始まり礼に終わる、礼儀は稽古の必要最低条件、師範に対する礼、上級者、年長者、稽古相手に対する礼を欠くことは許されない。年長者に対して敬語を使わない、あるいは上級者、年長者、稽古相手への気配りができない者は、有段者としての必要条件を満たしていない、ということは知らなければならない。

一般部の稽古では未熟な中学生、高校生に対しては、非礼な言動を看過することなく、思いやりのある厳しい目で注意して欲しい。誰もが礼儀正しく、真剣に稽古できるそのような場でありたいと願っている。

 

 

 

2017年10月1日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai