第62回 二言(にげん)挨拶

私の会社に、いつも心地よい挨拶をくれるKさんがいる。仕事を終えて更衣室でお互いに挨拶をかわすのだが、あることからその人の挨拶が他の人と違っていること、どうして暖かみを感じるのかがわかった。

それは、駒沢大学野球部元監督の太田さんの書かれた話を読んでからだ。読売ジャイアンツファンでなくとも知っている、かつて絶好調男の愛称で人気者になった中畑清さんが学生時代のことだった。

『当時の彼は、率直に言って田舎からそのまま出てきたような垢抜けない顔をしていたが、声だけは人一倍でかく、何よりも人懐っこい性格をしていた。まるで見知らぬ人と会っても平気で話をするし、お年寄りにも実に自然に声をかける。(略)さて、彼のしていた挨拶とは次のようなものだった。例えば誰かに「こんにちは」と声をかける。
普通ならこれでお終いだが、中畑は必ずその後に
「きょうはいい天気ですね」
とか
「おばあちゃん、いつも元気ですね」
といった”もう一言“の挨拶を付け加えるのだ。私はこれを「二言(にげん)挨拶」と名付け、普段の挨拶をただの挨拶に終わらせないよう心がけてきた。(略)』

読みながらKさんのことを思い出した。このKさん、20年ぶりに仕事で電話をかけて来て「Kですが」と親しく話してくるのに誰だか思い出せない。なれなれしい奴だと思いながら電話を切ったがわからない。数日後、廊下で出会い顔を見て思い出した。

「大畑さんお疲れ、今日は寒いね」
などと言っていつもニコニコ笑いながら挨拶してくれる。
私に、これが実行できたら道場も何もかも変わるのに・・・・・・。

 

 

2010年2月3日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai