第60回 素直さと気づき

たくさんの人の前で演武する子どもたちを見ると、緊張している様子が読み取れる。教えていないような動きも出てきたり、真剣にいろいろなことをしてくれるので思わず失笑してしまう。小学一年生から六年生、中学生と通して演武を見ると成長の過程がよく見えてくる。少しずつ合気道の技らしくなっていくのがわかる。

一つの技を何度も何度も丁寧に指導するのだけど、技の意味が理解できない、単純にかたちだけをまねて大切なところを無視してしまう。また、子どもの場合、一時的に修正できても、しばらくそのままにしておくとまた同じ過ちを繰り返すというサイクルから抜け出せない。自分で自分を修正することができないから、なかなか進歩することができない。型稽古の難しさがある。

失敗したときに「しまった、おれもうっかりしておった」と「自ら返る」ことができる人は確かな人であり、進歩する人だと安岡正篤さんは言っている。新聞に達人への訓戒として書いているように開祖植芝盛平先生も同じことを言われている。また、別な言い方をすれば自分自身を振り返る素直さが必要であり、素直さがなければ進歩は難しいと思う。「習い方がうまい人とは、習う素直さがある人だ」とは、王貞治さんの師である荒川博さんの言葉。

もう一つ肝心な事は同じ過ちを繰り返さないことだ。子どもが同じ過ちを繰り返すのを見て「どうして出来ないのだろうか」と思うのだが、これは肉体的な限界点ではない、大人の合気道でも肉体的限界点は存在しないと思っている。その過ちに気付くかどうかの意識の問題であり、自分の頭の中に埋め込まれた様々な情報を使って、それを超えて行くことができるかどうかが鍵となる。元楽天野村監督は「素質いっぱいのところで技術的限界がくる。そして、それを超えられない。こういう選手は二流にとどまるしかない」と。

 

 

 

2009年12月5日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai