第174回 殺傷事件

 五月二十八日朝八時前の通勤通学時、川崎市登戸殺傷事件が速報された。バス待ちの行列を後部から、小走りで十数秒の間に大人と小学生あわせて十九人もの人を二本の包丁で斬りつけ二人の死者をだした。不特定多数をターゲットにし、気付かれないように、逃げられないように考えた結果の犯行と思われる。

 列の最後尾にいたのが(背中を刺されて亡くなられた三十九才の男性)自分だったらと考えると、背後からの接近に気付くことができただろうか。列に並びながらスマホを見ていて、気付くことができずに刺されたかもしれない。交差点で信号待ちしていても、歩道を歩いても、バス停で並んでも、新幹線や電車に乗っても身に危険が及ぶことがあることを忘れてはならない。人と人、人と車にはそれぞれ間合いがある、人が銃を持っていれば人と銃の間合いがある。間合いの外に居れば危険な目にあうことはないが、新幹線や電車に乗れば安全な間合いを取ることは不可能だ。

 様々な事件には自分自身を事件現場に置き換えて考えている。2000年5月の十七才少年による西鉄バスジャック事件は特別で、考えさせられることが多い。佐賀を出て山陽自動車道の小谷サービスエリアで逮捕されるまでの十五時間半の間に、牛刀で斬られた乗客三人のうち一人が死亡した事件だった。他の乗客への配慮もなく、犯人の言葉を無視して窓から逃げ出した二人の乗客、その見せしめの為、三人が被害を受けることになったが、これでは命が助かっても人としての誇りを無くし、その先、生きて行くことができないのではないか。  私の七十年近い人生の中で、このような事件に遭遇したことはないが、世界中で起こる様々なことは自分自身のことだと考えるようにしている。外出時に、エレベーターに乗るとき、バスに乗るとき、説明会などがあるとき、どこに位置したらより安全を保つことができるか考えるようにしている。合気道をしている以上、どのようなことが起きようと対処できる覚悟と自信を持っていたい。

2019年6月2日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai