第175回 姿勢

 背筋のピンと伸びた姿勢の良い姿は美しい、亡くなられた山口先生の立ち姿もそうだった。自分もそのようになりたいと思い、矯正用ベルトなどで色々と試みるのだが改善されないで現在に至っている。

 姿勢、立ち居ふるまいは天候、精神的ストレス、人間関係など様々な刺激を受けて変化するので、無意識に同じ状態を保つのは至難の業だという。稽古でも、演武でも良い姿勢を保つためには日常生活における姿勢、立ち居ふるまいから変えていかなければならない。何歳からでも身体は変わり、日常生活のなかで変えられるそうだ。

 山口先生は、「座る、立つ、歩くの日常動作がそのまま技になる」と言われた。その座る、立つ、歩く方法を詳細に教えてくれる小笠原流礼法の本がある。静かな湖に石が沈んでいくように座り、風のない日に煙が一筋空に立ち昇っていくように立つ、その動作に無駄はなく、しかも、そのまま筋肉の鍛錬になっている。年を重ねて身体じゅうの筋肉が衰えて来ると、座ること、立つことが鍛錬になっていることを素直に実感できる。小笠原流礼法の身体作法には無理、無駄がなく、しかも自然な体づかいは美しい。また呼吸に合わせて動くことも教えている。「日本人の9割が知らない日本の作法」、「疲れない身体の作り方」この二冊でどこまで変われるか、自分自身の変化を楽しみにしている。

 残念ながら、私自身が山口先生の稽古の中で、「座ること」が技につながるという稽古を受けたことがないので、どのような技の説明だったのかわからない。しかし、座る、立つという動きの技は限られており、姿勢を正してこの動作を行うことには間違いない。姿勢に話を戻すと、正しい姿勢を身につけるまでは疲れを感じるが、正しい姿勢が身につけば疲れない、正しい姿勢を保つための筋肉が鍛えられるからだそうだ。道場だけでなく、日常生活のなかで自分の姿勢を意識し、徐々に姿勢を正す時間を長くしていくことが肝心なようだ。

2019年7月6日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai