第170回 客観視

インフルエンザ対策の話題の中、兵庫県明石市長の部下に対する暴言がテレビの情報番組を賑わしている。報道された会話録音を聞くと、道路工事の遅れの原因に怒りのスイッチが入り、その感情は徐々にエスカレートし自制心を失っているように思える。怒りが頂点に達した後は、冷静さを取り戻した会話もあったようだが報道されるのは暴言の部分のみで、辞職という結末に終わった。

怒りの感情は自分の声によって増長され、相手を威圧することで快感を得るようだ。そして、それは相手を制圧するまで続けられるが、この怒りの感情を爆発させることは結果として習慣化してしまう。小池龍之介著書「考えない練習」によると、怒りに怒りをぶつけていくうちにだんだん屈折した性格になるそうだ。そうならない為には、ムカつく!と思ったら、≪私は「ムカつく!」と思っている・・・≫と繰り返し念じてみる。≪いま、「ムカつく!」と思っているだけであって、これは真実ではない。自分の心が作り出しているだけのものである。≫と認識することだ・・・二度三度同じ言葉を念じて、「○○と思っているだけなのだな」と心に言い聞かせると、自分の心を客観視することができると書かれている。

感情の高ぶりは呼吸にも現れ、浅い呼吸になる。座禅では深い呼吸を行うが、意識しなければ継続することはできない。日常生活のなかでは、いつも浅い呼吸をしていることがわかるが、興奮すると呼吸はさらに浅くなり、苦しくなる。小池龍之介氏によると、ここで自分の呼吸が浅く、速く、苦しくなっていることに気づくと、心が自動的にきちんとした呼吸に自動的に補正してくれるとのこと。また、呼吸は心と連動し、その呼吸に結びついていた嫌な感情や煩悩は流れていく。“人は自分の姿を認知すると、変わらざるを得ません”と書かれている。

逆に、自分自身を客観的に観ることができなければ、変えることはできないと思っている。合気道においても受身、技が上達するためには、自分自身が今どういう状態にあるかを、心身の両面について、いつも意識し、チェックする必要がある。

 

 

 

2019年2月2日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai