第179回 登山口

子ども達の稽古前トレーニングで逆立ち三十秒を毎回行っている。足を持ってくれる子に支えられてなんとか三十秒をクリアできる子が、頑張って少しずつ自立できるようになる。逆立ちは無理だと決め付けている子でも、何度も試みるうちに足が上がるようになる。“できた”と私が喜んで叫んでも、本人は何食わぬ顔、当然のような表情をしていたが内心は喜んでいるはずだ。

合気道の技は相対稽古によって習得する以外に方法はない。どんなに一人稽古を重ねても、進む道が違っている限り、それは無理というもの。どんな合気道を目指すか、それによって稽古方法は違ってくる。私の場合、もちろん山口清吾先生の合気道を目指している。具体的に言えば、たとえぶつかって来られても相手を弾き飛ばすだけの強さを持ち、相手に身体を掴まれてもさばく手は柔らかく、足はいつかず軽快に、無駄な動きと無駄な力をなくし、何ものにも囚われることなくいつも適格な状況判断で技を繰り出し、そして、いつも稽古相手から学ぶ姿勢を忘れず、稽古相手に対する感謝の気持ちを忘れない、そういうふうに成りたいと、私は稽古している。

 ひとり一人のスキルが上がれば、もっと良い稽古ができるようになるし、もっと楽しくなる。先日の津山での遠藤師範講習会の稽古内容を、その日の稽古で試してみた。私の説明が不十分で理解できない人も居たと思う。わずかな手の動きを感知できる受身が必要条件だと思っている。津山では十人くらいの方と稽古させてもらったが、楽しく稽古できたのはひとりしかいなかった。この稽古は型稽古ではなく、当たり、崩しからの受身と、受身の動きに合わせたさばきの稽古だった。上級者の稽古と言って良い。

何処を目指すかは個人の自由だが、私が指導する限りその道は違わない。登山に例えると、頂上を目指すには色々な登山口があるが、頂上にたどり着くには正しい判断のできるガイドが必要。自分がそのガイドになれるかどうか・・・。

2019年11月3日 | カテゴリー : めざせ達人 | 投稿者 : koukikai